REJAニュースTopへ

日本不動産ジャーナリスト会議(REJA)が提供するニュースサイト

<< 地震による屋根瓦の崩壊は、業者の手抜き工事か?―茨城県水戸市周辺の被害状況 | 日本不動産ジャーナリスト会議 | 同じマンションの1階が震度6でも中層階は震度6強、上層階は震度7!:矢野克巳氏が問いかける災害常識の再点検〜マンションに住むための災害認識は今のままでいいのか〜 >>

マンションの被災状況を確かめたのはやはり管理会社だった!:管理組合の当事者能力の弱さはこれから直視すべき急務となる〜現場の最初の目撃者はマンションの管理組合だけしかいない〜

【2011-04-15:村井忠夫】管理業協会の調査がやはり一番早かった!東日本大震災の被災マンションの「大破」はゼロ、「軽微な損傷」が7割「被害なし」は1割

 東日本大震災で被災したマンションの実情はまったくといっていいほどわからなかったが、高層住宅管理業協会の調査結果が判明して少し様子が見え始めてきた。同協会が東北6県の会員管理会社受託物件の1597管理組合について調べた結果によると、倒壊や建替えが必要になるほど致命的な被害を受けた大破マンションはゼロ、外見上ほとんど問題がない軽微な損傷だったマンションは70%、まったく被害がなかったマンションは11%だった。

 注目したいのは、この被災調査結果が中間報告の形で発表されたのが被災後一週間の3月16日、その後の続報が4月1日だったという早さだ。調査は目視とヒアリングで行われ、一級建築士など技術者の調査は限られるとの断りがある。あらっぽいといえばいえるが、今度のような緊急事態では何より早さが求められるから事態のあらましが早急に把握できればばいい。正直にいって、未曾有の災害のもたらした実情がこんな短期間でわかるとは思いがけなかった。

 しかし、これほど短期間に行われた調査の結果を「マンション管理新聞」が報じた。日経BPの「ケンプラッツ」も詳しく取り上げている。そのケンプラッツは、管理業協会が会員管理会社に対して「管理組合が長期修繕計画作成の際に耐震診断や耐震補強を盛り込むように提案した」ことも伝えている。

 理屈でいえば、分譲マンションの維持管理の担い手は管理組合なのだから、建物の実情把握は管理組合にとっての最重要課題だ。そのことは、今度のような天災であっても変わらない。しかし、それは建前であり理屈であって、管理組合がその課題を実際に果たせることは滅多にない。率直にいえば、絶無といってもいいだろう。大きくてわかりにくいマンションの建物の損傷を短時間で確かめられる専門知識や経験の持ち主が管理組合にいないからだ。理念が唱える課題の担い手がいなければ、その部分で管理組合は当事者能力を欠くことになる。

 マンション管理の主役が管理組合だという何十年がかりで唱えられてきた理屈も、専門家が不在であり、もしいたとしても対策の実行に必要な総会だの理事会だのという組織的意思決定原則ががんじがらめにしばられる事情があるから、結局のところ短期間に対応した実態把握は不可能になる。

 しかし、こうした管理組合の抱えるハードルが、管理会社には存在しない。維持管理のプロである管理会社には相応の専門スタッフがいるし、委託契約に沿う限り管理組合の要望に答えてすぐに動くことが必要となる。事実上、管理組合側には、自分たちがやれないことを管理会社が引き受けてくれるはずだと期待する暗黙の他人頼み意識が強いことも否定できない。

 こうした理屈と実際とのギャップが管理組合の管理会社依存度の大きさをあらためて考えさせることになる。

しかし、本当のことがわかるのはこれからか?:建築学会発表の研究成果が語る地震被害調査の難しさ

 ところで、前記のケンプラッツには、興味深く、かつ気になる記事が出ている。東日本大震災の一週間前、3月4日に発表された研究成果の紹介記事で、長周期震動に遭遇した超高層ビルの事態を取り上げたものだ。東京理科大学理工学部の北村春幸教授が代表を務めるワーキンググループによると、「超高層建物が大きな地震を受けた直後に実施しなければならない応急危険度判定(避難の要否)や被害度判定(被害の程度と再使用への工期・工費)は、困難を極める可能性が高い」とある。

 大地震発生後の超高層ビルの構造安全性の確認は、高度の知識を備えた専門家の不足、応急危険度判定の所要日数が現状でも8〜10日だが、今後は専門技術者不足と対象となる超高層建物の増加で22〜30日になりそうだという。

 以下、見出しだけを紹介する。
「調査は1棟当たり丸1日」
「何が調査を妨げるのか」
「超高層ビルでの被災調査の阻害要因」
「従来の判定法には限界も」
「利用者の安全確保には早期の情報確保が必要に」
「構造技術者が足りなくなる」。

 この研究成果は超高層ビルについてのものだが、当然ながら超高層マンションにもそのまま当てはまる。さらに、その指摘の本質は、超高層でない中層低層のマンションにも共通することに気づかなければなるまい。

 24時間つねに人が住む集合住宅としての本質に、細かく住戸ごとに区分された所有権が織りなされて権利関係が複雑になったマンションでは、損傷という物理的な事態の確認が事務所ビルや商業系建築物とまったく異なる難しさをもたらす。前記の研究成果が物語る難しさは、マンションの場合もっと大きくなることは間違いないだろう。

 この点は、被害調査の実行に、個人の生活空間となる専有住戸の実情確認の難しさをもたらす。地震による被災状況を目視で確認できるのは住戸に立ち入らない状態で建物全体をみる状況にとどまるのであって、専有住戸の玄関ドアの内側がどうなっているかという点についてはまったくわからないままになるだろう。この点は、管理会社といえども例外ではない。その意味では、前記の管理業協会の調査も、まず「とりあえずこれだけのことがわかった」という意味にとどまるのはやむを得まい。

最後は管理組合自身の組織力再点検だろうが、今までのマンション管理常識の見直しが前提となる

 どうしたらいいか。答ははっきりしている。一にも二にも、管理組合組織の当事者能力の再点検しかない。管理組合という組織が自力でやれることは何か、やれないことは何かを確認して、組織運営の基本原則が実情に即応しているかどうかを確かめること。自力でやれないことは、外部のどこに助力を求めるかを確かめること。建物全体で起こった事実を確かめること、確かめてわかった事実を情報として知らせること、誰もが納得する方法で物事を決めることなど、常識的なことばかりだ。

 しかし、その常識が具体的に実行されるための条件が組織の形とルールの上で実現できていない管理組合がかなり多い。

 こういえば、管理組合の人にはほとんど理解してもらえる。しかし、理解しても実行はされない。もう今年は任期満了だからとか、周りの人に説明するのが大変だからとか・・・・。

 要するに、管理組合では切実な課題にならないわけだ。そういう感じで、何十年もが過ぎた。

 そして、今度の大震災が起こった。

 これから、どうするか。

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://news.realestate-jp.com/trackback/1406946
この記事に対するトラックバック




お問い合わせメールフォーム