REJAニュースTopへ

日本不動産ジャーナリスト会議(REJA)が提供するニュースサイト

<< 「触れてはならない問題」にどう決着を付けるのか?―大震災が日本に突きつけたもの | 日本不動産ジャーナリスト会議 | 東北太平洋沿岸に500kmの鎮魂の丘造り構想―防災機能を備えた観光資源に >>

2050年を視野に入れた震災復興プランを!―地方の小都市に立ちはだかる人口の波

 【2011-03-31:REJA会員07】震災後の大胆な復興計画として、いつも引き合いに出されるのが、関東大震災(1923年)の翌日、内務大臣だった後藤新平が描いた基本方針だ。「復興のための独立機関をつくる」「国費を思い切って投入する」「焼け跡になった土地は国が買い上げる」など、国家予算の2倍にも達する大胆かつ斬新なプランだったため、反対論が続出した。それでも防災に配慮した道路や公園など、震災後は現代に通じるような復興策が実現した。計画を阻んだのは、土地やモノの所有権など、庶民の私権をどう制限するかだった。今回もまた、津波で流された家屋、自動車や船舶の処理が迅速な復興に立ちはだかっている。 

  では、後藤プランを彷彿とさせる復興プランは、現在われわれの手でつくれるのか。まず、下敷きとされるのが、阪神大震災の復興計画だ。ただ、被災地は京阪神都市圏の心臓部分に近く、大企業も数多く立地し、継続的な雇用力があった。被災エリアが面積的に限られた点も今回とは違う。

国交省レポートが描く2050年の国土の姿

 さてここで、視野に入れなければならないのは、これから急速に進む地域の過疎化、人口減少、高齢化の波だ。筆者は今回これを改めて強調したい。

 例えば、国土交通省が2010年12月にまとめた2050年の展望レポート「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」では、震災で人口減少に追い討ちをかけられそうな東北地方にとって衝撃的な内容に満ちている。

 2050年―。日本の人口は3300万人減少し、高齢化率は40%となり、女性の平均年齢は地方圏では57歳を超える。東北地方は現在(2005年)の414万世帯から305万世帯に減るが、減少率は26%で、全国平均の13%を大きく上回る。その多くは単身世帯が占め、その中でも独居老人世帯がどんどん増えていく。生産年齢人口の人口率も北海道に次ぐ55%と最も高い。

 地方の小都市は高齢者の比率が50%を突破する限界集落のような「限界自治体」が続出する。国全体で高齢者は1200万人増加し、生産年齢人口(15歳〜64歳)は、約3500万人減少し、若年人口(0〜14歳)は900万人減少する。高齢者1人当たりの生産年齢人口(14歳〜64歳)は、2人を切る。中でも過疎化が深刻な東北などでは、雇用力が落ちているため、高齢者を支えていく現役世代の数は急減する。

 人口規模や密度が落ちると、1人当たりの行政コストは増大するが、高齢化・過疎化により、介護や医療のニーズは増えるばかりだ。レポートでは、「小都市ほど人口が大きく減少する」「行政や医療といったサービスが困難になる都市圏が生じる恐れがある」「隣接都市圏と連携していくことになる」と書いている。

避けられない高齢者の都市への移住

 東京を中心とする都市部も人口減少するが、雇用の場があるため、地方からの流入は止まらず、集中度合いが高まる。その分、地方の過疎化と高齢化には拍車がかかる。このシナリオは、国の人口予測の中位推計に基づいており、悲観シナリオと楽観シナリオの中間だ。しかし、どれも平時を想定したもので、今回のような1000年に1度ともいわれる震災を受けた地域では、人口の高齢化と過疎化に拍車がかかりそうだ。

 人口10万人未満の都市では、人口減少率が平均の25.5%を上回るとされる。おそらく、40%、50%も減少する都市が多発する。食料品店などが撤退し、まず、生活でライフラインが脅かされるのは高齢者で、高齢者の都市への移住が政策テーマとなる。2050年には人口再配置をしないと、洪水や地震リスクの高いエリアでさらに高齢者世帯数が急増すると、国交省の予測は警告を発している。

 石巻は被災前、人口10万人を超えていたが、宮古、釜石、大船渡、南相馬といった被災地はそれ以下だ。震災の打撃で国が想定した「2050年の人口減少と高齢化」が実現してしまうかもしれないのだ。震災余波で都市が一気に老け込むと、財政的にももたなくなる。重い復興費用ものしかかり、大胆な再生策を施さないと、海沿いに「三陸の夕張」が林立してしまうかもしれない。

公共事業の乱発で過疎化は防げるのか

 それを防ぐため、「早期の原状回復に向けた復興が必要」という声が強い。もちろん、その面もあるが、港湾や道路を元通りに戻したところで過疎化はとめられない。そうした流れにあるので、鍵は地域の雇用をどうつくっていくかだ。人は職を求めて都市部へ流れる。東北地方は戦後、出稼ぎが盛んだったが、地元に公共事業を持っていくことで過疎化をとめようとした。今回はどうするのか。そこが問われる。

 公共事業を乱発した結果、地方は網の目のような道路網で結ばれたが、人口減少や高齢化により、耕作放棄された農地も多く、相続人がわからなくなった土地も増えている。最高裁の資料では、年間の相続人不存在のため、財産管理人を選任した事例は今世紀に入り1万件を超えたが、この先数倍に増えていくと見られる。空家は全国に約760万戸もあり、とくに過疎化が進む東北では、空き家がどんどん増えていくはずだ。全く人が住まない無居住化のエリアも増えていく。土地も住宅も実は供給過剰なのだ。マクロで見ると、資産の保有にこだわる時代ではなくなりつつあるようだ。総じて過疎地は20年ほど地価が下がり続けており、利用価値は落ちる一方だ。

 国土地理院によると、地震による地盤沈下や津波の影響で、失われた東北の面積は約400万k岼幣紊如∋骸蠕の内側の面積の約7倍近くに当たるという。失われた生活適地は大きいといえるが、大災害のリスクのあることもはっきりした。2050年を視野に入れると、多くの遊休地や遊休住宅が生まれるので、「原状復帰」にこだわった失地回復の政策がベストであるとは限らない。津波をかぶった農地は、例えは悪いが「塩漬け」の状態で、残念ながら土質の改良などには長い時間と費用がかかる。放射線の被害についても同様だろう。

 「では、どうすればいいのか」という悲痛な声も聞こえてきそうだ。当面の住宅や生活のすべは確保しつつ、本格的な復興はやはり2050年を視野に入れるべきだろう。

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://news.realestate-jp.com/trackback/1406941
この記事に対するトラックバック




お問い合わせメールフォーム