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「住宅連結新時代」が続く2011年からの不動産の未来は「絶望」なのか?―タワーマンションが高度成長時代の墓標にみえる

不動産絶望未来  【2010-12-10:山下 努】2009年度の新設住宅着工は年77.5万戸と空前の低水準に落ち込み、2010年度も年80万戸前後の水準が続いている。需要をかろうじて維持したのは、豊かな高齢者が子供と一緒に買う都心のマンションがよく売れたからだ。筆者はこれを「住宅世代連結新時代」と呼ぶ。東京都心や湾岸エリアでは、この長期不況のなか、6000万円、7000万円の新築マンションが再び売れ始めた。筆者の家の近くでも、1億円近い物件を下見に来る30代の夫婦とその親らしい年配の方で週末はごった返す。「高い買い物をするものだ」とあきれているが、実態は親と子の2世代がかりなのだ。あるシンクタンクの調べでは、35歳の正規社員は、10年ほど前の35歳に比べて年収が200万円程度低いという。【写真】=山下努著「不動産絶望未来」(東洋経済新報社1680円)

  東京カンテイの調べでは、09年の東京の標準的な新築マンション価格は東京での標準年収の10倍を若干突破した。いくら低金利とはいえ「年収の5倍が目安」とされていたのに、10倍になったのは明らかに親の支援の影響を考慮せざるを得ない。国は、住宅資金の税金のかからない贈与限度について期限をつけて大盤振る舞いしている。1億円近い住宅ローンが30代で組めるはずはないので、やはり親が数千万円程度工面しているのだろう。

 ひねくれ者の筆者には、巨大な墓石のように見えるタワーマンションに、孫の手を引いて入る洒落た高齢者たちを見て「高度成長を独り占めした世代の壮大な免罪符なのだろうか?」と思わずにはいられない。もちろん、この時代、住宅資金は連結しても、住居は2世代で一緒の場合は少ないだろう。ただし、子供たちの新居の近くに高齢者が家を構えるケースが多い。例えれば、子会社とゆるい連結をする金満な老舗といえるだろう。

 ところで、筆者は世代会計に関心があり、09年に秋田大学の島澤諭先生と共著で『孫は祖父より1億円損をする―世代会計が示す格差ニッポン』を書き、高度成長を享受した70代、80代とこれから生まれてくる世代を比べると、世代間格差(政府に納める税金などから政府から得るサービスなどの差)は1億円程度となるという驚愕の現実を世に問うた。これは、あくまでマクロレベルの話で、(まれに)貧乏でかわいそうなお年寄りもいれば、(ごくまれに)高齢者並みに金持ちの若者もいる。

 しかし、これをミクロで見ればどうなるか。やはり、金持ちのお年寄りの子供は、巨額の住宅贈与を通じて金持ちになれるのである。恵まれた時代に生きた親を持つ子供は、親と住宅連結すれば自分もリッチになれる。

 湾岸地域で見られる「マリナーゼ」とか「キャナラーゼ」とかちやほやされる金満若奥様は、実は親掛かりの「成金嬢」なのである。夫や自分の力で「●●●―ゼ」になったわけではないニセモノなのだ。

 では、一部の金満世代とキャナラーゼの関係を世代間の時間の仕送りの問題から考えてみよう。政府が1000兆円近い金融債務を抱えるのも、高度成長ひとり勝ち世代が息子や娘にタワーマンションを買ってあげられるのも、実は世代間の富の分配に著しい歪みがあるからだ。金融資産と実物資産の大半を持つ高齢層は、十分な税負担をしているか疑問のうえ、息子や娘の世代から巨額の「仕送り」(所得移転)を受けているからだ。所得移転の結果、豊かな年金や医療サービスが実現できている一方、現役世代が支える健康保険組合は、高齢者への「仕送り」のため、9割近くが赤字に転落。「健康保険」とは名ばかりで、実は制度自体が大出血の病気なのだ。

 では、次にこの仕送り問題を時間の移転という問題から捉えてみよう。現役世代は仕事に時間を捧げることで所得を得て、高齢者に仕送りをしている。つまり、お金の仕送りは時間の仕送りと置き換えることができる。これからの急速な高齢化と人口減少で、高齢者向けの時間の仕送りは増える一方だ。そうしたなか、現役世代には無意味な通勤時間がコストとしてますますのしかかってくる。この「痛勤」を緩和する切り札が都心のマンションなのである。

 話をふりだしに戻すと、豊かな高齢層がもらいすぎた分を子供の世代に分け与えた結果がタワーマンションの乱立と見ることができるのだが、それは、子供の世代にとってますます貴重となる時間を贈与してあげているというふうに、違う角度からも見ることができる。高齢者に移転する時間が増えても、通勤時間が半分や4分の1になれば、時間的には子供の世代も救われるからだ。

 名目成長率は20年近くゼロ付近だが、高度成長時代は二ケタ成長だった。日本の黄金時代の残滓としてタワーマンションを見ると、なんとも切ない気持ちになるのは私だけだろうか。「3丁目の夕陽」の右肩時代に生きた方々は、マイナス成長と巨額債務に苦しむ次世代への免罪符としてタワーマンションを「連結買い」しているのだろうか。

 実は、住宅の「新都心回帰」はこうした世代間の複雑な関係が背景にある。

 そこで筆者は、最近、不動産業界からの追放処分?も覚悟で『不動産絶望未来』(東洋経済新報社)を出版した。内容は、上記のごとく、2010年代の個人の資産戦略の全面的見直しを迫るものだ。読んだ読者の9割が何らかの「絶望感」(失望感)を抱き、推定5割が何らかの反感を感じる話題作になっている。

 なぜなら、下記のような書き出しから始まるのだ。「絶望」しても後悔しない勇気のある方は、ぜひ1冊手に取ってほしい。

            ■

 不動産価格を左右する経済知識も知らずに、「男の甲斐性」とか「スイートホーム」の実現のために家を買うと、5年後、10年後には大変なことになるのをご存知ですか? そんな言葉を信じて買った家は、あなたを縛る「生涯監獄」に化けてしまうことがあります。「そろそろ買いどき」といった不動産業界の俗説に耳を貸して90年代に「安い」と錯覚して家を買い急いだ人はどうなったでしょうか。長期不況や終身雇用の崩壊の荒波を受け、マイホームが競売にかけられた人もいます。当初の返済額を抑えた「ゆとりローン」を組んだばかりに、消費者金融に駆け込んだりする人もいます。飛び込み自殺でローンを片付けた人もいるでしょう。そうでない人も、自宅の価値が暴落しています。そこから一生抜け出せない塩漬けの「未来拘束装置」になっているのですが、本人は気が付きません。こうした人は住み替えも失敗するに決まっています。

 筆者は、新聞や雑誌を書くために、建設・不動産・住宅業界を20年近く取材しています。不良債権問題を徹底取材するために、不動産投資やマイホーム購入で大失敗した会社や個人、伝説の住宅・ゼネコン経営者などに肉迫してきました。そのエッセンスを詰め込み、失敗しない家選びの新法則をまとめたものが本書です。

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