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太陽光発電の買取制度が11月からスタート―現行制度のままでCO2削減25%に対応できるのか?(下)

次世代エネルギー・社会システム協議会 【2009-11-26:千葉利宏】「低炭素社会の実現に向けて住宅への太陽光発電システムの普及を進めると同時に、電力を効率的に使用するためにスマートグリッド(次世代電力網)の導入が必要だ」―10月22日に開催された「ゆとりある豊かな住生活を実現する国民推進会議」第2回全国大会で、会長の奥田碩氏(日本経団連名誉会長)はそう挨拶した。それから1か月も経ず、オバマ米大統領が初来日した11月13日に、経済産業省内にわが国のスマートグリッド戦略を検討するための「次世代エネルギー・社会システム協議会」=写真=が設置された。太陽光発電など新エネルギーの利用拡大には不可欠と言われながらも、日本ではなぜか置き去りにされてきたスマートグリッドへの取り組みがようやく本格的にスタートする。
地産地消型電力供給には欠かせないスマートグリッド

 1年前にREJAニュースに掲載したコラムでは、低炭素社会の将来ビジョンとして地域で発電した電力を地域で消費する電力の“地産地消”を高めていく必要があるだろうと書いた。CO2削減に向けて石油などの化石燃料を使った発電を減少させつつ、太陽光や風力などの新エネルギーの導入を進めていけば、エネルギー供給も従来の大量発電大量供給型から、分散発電による地産地消型にならざるを得ないと考えられたからだ。

 分散発電のイメージは、既存の発電所に加えてコジェネレーション、太陽光、風力、燃料電池、電気自動車など様々な発電システムや蓄電装置が電力網に接続されて、相互に融通し合いながら電力の安定供給を実現するというものだ。複雑化する電力網を効率的にかつ安定的に運用するためには、IT(情報技術)を利用して電力を制御するスマートグリッド=賢い電力網の構築が不可欠であり、欧米では2003年頃から新エネルギーの導入にあわせてスマートグリッドの研究開発が盛んに行われてきた。

 2009年2月に二階経済産業大臣(当時)が、太陽光発電の固定価格買取制度の導入を表明したが、太陽光発電の普及を加速することによって、日本のエネルギー供給システムをどう変えていくのか?といった将来ビジョンは示されなかった。1月に米国でオバマ政権が誕生し、新たな経済対策としてスマートグリッドへの積極的な投資を行うことを表明。日本でもスマートグリッドという言葉は少し知られるようになったが、この時点でもスマートグリッドの話題はほとんど出なかった。

日本にスマートグリッドは必要ないのか?

 なぜ日本ではスマートグリッドの必要性が認識されてこなかったのか?理由はいろいろあると思うが、やはり電力業界が日本にはスマートグリッドを導入する必要がないと主張し続けてきたからだろう。電力業界の言い分は、日本の電力網はすでにインテリジェント化されており、スマートグリッドを導入しなくても高効率で高品質の電力網が実現している。オバマ政権がスマートグリッドへの積極投資を始めたときも「米国は日本と違って電力網が老朽化し、非効率で無駄が多いから電力網の再構築が必要なだけ」との冷ややかな見方をしていた。

 しかし、日本の電力メーターはいまだにアナログ方式でコンピューター化されておらず、利用者がリアルタイムに電気使用量が把握できないし、太陽光発電を既存の電力網に接続するにしても総発電量1000万kwが限界と言われていた。今後、電気自動車などの普及も進めば、そう遠くないうちに電力網の機能を大きく向上させる必要があるはずだなのだが、なぜか日本ではスマートグリッドは無視され続けてきた。外部から見ていると、まるで“スマートグリッド”という言葉そのものに拒絶反応を示している印象すら受けた。

 そうした背景には、「電力自由化」に対する電力業界の警戒感があるのではないだろうか。スマートグリッドに様々な発電システムや蓄電装置を接続して誰もが自由に利用できるようにするには、「発電と送配電の分離」という議論が避けては通れなくなる。ある電力会社の幹部から取材の時に「太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を電力自由化が阻害しているとする見方は非常に遺憾だ」と抗議された経験があるが、欧米では発送電分離を含めて電力自由化を進めたことで、新規参入者も自由に電力網が利用できるようになり、新エネルギーの普及が促進されたのは事実だろう。

エネルギー安全保障を重視する欧米

 欧米のスマートグリッド戦略をみると、彼らがCO2削減のためだけに新エネルギーの導入を促進しているわけではないことが判る。経産省の幹部も「底流には明確なエネルギー安全保障戦略がある」と明言する。20世紀まではG7を中心とした先進国で大量消費することができた天然資源も、中国、インドなど新興国の台頭によって獲得競争が激しくなれば、どの国も自国の資源を保護し、有効に活用しようとするのは当然だろう。エネルギー自給率の向上はどの国にとっても安全保障上、重要なテーマのはずである。

 2007年のエネルギー自給率が78%のイギリス、50%のフランス、40%のドイツが主要メンバーであるEUの場合は、天然ガス輸入の4割以上、石油輸入の3分の1以上をロシアに依存してきた。しかし、2006年のウクライナに対するガス供給停止によってロシアへのエネルギー依存への危機感が一段と高まり、新エネルギーの導入を積極化している。すでにEUでは2001年に再生可能エネルギーの導入目標を設定し、2006年にはスマートグリッド構築には欠かせないスマートメーター(コンピューターと通信機能を持つ電力メーター)の設置を義務化するように加盟各国に指令を出した。

 エネルギー自給率が78%の米国でも、地球環境問題には不熱心と言われてきたブッシュ政権が2007年にエネルギー自立安全保障法を制定し、輸入石油の半分を再生可能エネルギーに転換することを決めた。GE、IBMなどが参加してスマートグリッドの普及促進を図る民間団体、グリッドワイズ・アライアンスも2003年から活動している。

エネルギー自給率17%の日本に求められる新エネルギー戦略は?

 では、エネルギー自給率が17%(原子力を除けば4%)の日本はどうか。新エネルギーの発電電力量は2005年で全体の0.5%にとどまり、2008年に公表された長期エネルギー需要見通しでも、2020年で2.2%(最大導入ケース)。今年から本格化した太陽光発電の普及促進も、CO2削減、産業育成ばかりにスポットが当てられ、エネルギー自給率の問題には全く触れられていなかった。民主党政権が太陽光発電の固定買取制度見直しを進めるにしても、CO2削減だけを根拠にした見直しで国民の理解を得られるだろうか。

 先に発足した次世代エネルギー・社会システム協議会では、12月中旬をメドに中間まとめを行う予定だ。同時に米国のグリッドワイズ・アライアンスに相当する日本の民間組織、スマートコミュニティ関連システムフォーラムも設立される。いまだにスマートグリッド導入に対する電力業界の抵抗が強いなかで、エネルギー安全保障にまで踏み込んで議論をどう進めていくか。民主党政権の政治判断が求められるところである。
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