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太陽光発電の買取制度が11月からスタート―現行制度のままでCO2削減25%に対応できるのか?(中)

 【2009-11-12:千葉利宏】太陽光発電の余剰電力を従来の2倍の価格で買い取る新制度が始る直前になって、同制度の見直しに関する動きが慌しくなった。直嶋正行経済産業大臣が10月27日に制度見直しのプロジェクトチームの設置を決め、31日には菅直人副総理が2010年度から全量買取方式の導入を表明するものの、11月2日に経産大臣が否定。いずれにしても民主党がマニフェストに盛り込んだ全量買取方式の導入で、太陽光発電システムの普及を一段と加速させる方向であるのは間違いなさそうだ。筆者も全量買取方式の導入には賛成だが、単に普及促進だけが理由ではない。改めて全量買取方式のメリット、デメリットを考えてみる。
買取単価が同じなら38万円もお得?

 経産省が余剰分買取方式で試算した導入ケース(戸建住宅に費用約185万円の3.5kw太陽光発電システムを設置した場合)で、全量買取方式の収益を計算するとどうなるか。年間発電量約3500kwhとして全量を単価48円で10年間買い取ってもらえると、年間の売電額は16万8000円、10年では168万円と、誰にでも簡単に計算できる。太陽光発電システムの導入費用から国や地方自治体の補助金を引いた残り122万円は7年3か月で元が取れてしまう。現行制度で10年間に得られるのは自家消費分約30万円に、売電額約100万円の約130万円なので、約38万円もお得だ。

 09年1月の国の補助金復活で、すでに太陽光発電システムの設置台数は、09年前半で昨年同期に比べて約2倍に増えたと聞く。これに固定価格買取制度が導入されれば、太陽光発電の普及が一気に進むと期待されたところで、今回の見直し論議である。現行の補助金や買取単価を維持したままで全量買取方式に移行すると決まっているわけではないが、鳩山政権がCO2削減25%との目標を掲げたこともあり、もっとお得になると判断すれば、買い控えが起こるかもしれない。ただ、それも一時的なもので太陽光発電の普及が今後、一段と加速するのは間違いないだろう。

数年後に訪れる1000万kwの壁

 しかし、太陽光発電の普及には、大きな制約要因がある。現在の系統電力網に太陽光、風力などの発電システムを大量につなぐと電圧や周波数が不安定になるという問題だ。いまのところ、太陽光発電システムをそのまま電力網に接続して、余った電力を買い取っても問題はないが、電気事業連合会によると、太陽光などの発電出力の合計が1000万kwを超えると、電力網などに新たな対策を講じなければ、そのまま接続して買い取ることが難しくなるという。

 2007年末の時点で、太陽光発電の累計電力出力は191.9万kwに達している。経産省では固定価格買取制度の導入で2020年には現在の20倍の普及が見込まれるとしており、その予測どおりになれば、数年後には1000万kwに達してしまう。電力業界では、太陽光発電の系統電力網に与える影響について詳細な調査に着手し、具体的な対策の検討を進めているが、そう遠くないうちに電力網の再構築は避けられない状況だ。しかし、そのための費用を誰がどのように負担するのかも現時点は全く決まっておらず、ロードマップづくりも今年8月から始ったばかり。太陽光発電の普及促進も、そうした基盤整備の状況を考慮しながら進めざるを得ないのが実情である。

全量買取なら条件次第で普及速度を調整しやすい?

 全量買取方式の最大のメリットは、買取単価と買取期間が決まれば、得られる収益をほぼ確定できるという点だ。余剰分買取方式では、設置した家庭の電気の使い方によって収益にかなりのバラツキが生じるので投資対象となりにくいが、全量買取方式なら誰でも簡単に計算できて投資しやすい。

 裏を返せば、買取単価や期間などの条件設定によって、どの程度の普及が見込まれるのかを予測しやすく、普及のスピードをコントロールしやすいのではないだろうか。筆者が全量買取方式の導入に賛成するのは、仕組みそのものがシンプルなので、いろいろな施策を組み合わせながらCO2削減に向けて政策を展開するのに使い勝手が良いと思うからだ。

 ドイツやスペインなどで太陽光発電が急速に普及したのも、全量買取方式によって太陽光発電が投資対象となったからだと言われる。その一方で、昨年のリーマンショックの後に、買取単価を引き下げたことで太陽光発電バブルが崩壊し、今年に入って需要が一気に低下した。環境先進国と言われるドイツでも、投資条件次第で太陽光発電の需要は大きく変動する。その点はデメリットとして、日本に全量買取方式を導入する場合には、意識する必要があるだろう。

マンションへの普及やダブル発電にも対応可能に

 1年前に掲載したコラムでも、自家消費を前提とした仕組みでは、既存マンションに太陽光発電システムを導入するのは困難だろうと指摘した。住民それぞれにCO2問題に対する考え方も異なるので合意形成の難航が予想されるからだ。しかし、全量買取方式の固定価格買取制度であれば、10年後に予定されている大規模修繕工事に備えて長期修繕積立金の運用先として太陽光発電に投資することで住民の合意が得やすくなると考えられる。ちなみに現行制度では、48円の買取対象を発電出力10kw未満のシステムに制限しており、こうした規制を組み合わせながら全量買取方式でマンションへの普及を進めていくこともできるだろう。

 全量買取方式は、太陽光発電と、風力や家庭用燃料電池などを組み合わせた「ダブル発電」の問題にも対処しやすいと考えられる。現行制度では、太陽光と風力のダブル発電の場合、どちらで発電して余剰となった電力なのかを区別できないので買取対象から除外される場合もある。風力から太陽光への逆潮流防止装置(10万円程度)を設置して区別できるようにした場合でも、太陽光発電の余剰分の買取単価は39円と低く抑えられた。

 家庭用燃料電池は、発電量が自家消費分以下に抑えて発電する仕組みなので、逆潮流防止装置は必要ないが、ダブル発電なのでやはり買取単価は39円だ。「家庭用燃料電池も、燃料にガスという地下資源を利用している点では同じ」(経産省幹部)という理由もあるようだが、同じ太陽光発電システムを導入して買取単価が単独の場合と異なるのは消費者にとって納得しずらい。最初から自家消費と全量買取を分けて、全量買取方式なら買取条件は同じとした方が公正な制度として国民の理解も得やすいのではないだろうか。
つづく

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