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政治決着でよかったのか!―東京中央郵便局の一部保存問題

 【2009-03-26:川上湛永】重要文化財級として日本建築学会や市民グループが保存を訴えてきた東京駅前の旧東京中央郵便局は、一部保存を組み込んだ再開発計画より保存部分を2倍に拡大することで再開発がゴーとなった。鳩山邦夫総務相が2月末、突然のように保存を唱えはじめ、二度の現場視察などの末、日本郵政が譲歩して、決着した。22日には、日本建築学会が、東京・港区の建築会館で「緊急シンポジウム 東京・大阪中央郵便局の文化的価値」と題する集会を開いた。シンポでも一部論議になったが、文化財的価値のある建築物の保存としては、今回のような政治決着ではたしてよかったのか。
東京中央郵便局日本建築学会緊急シンポ
写真:保存部分が拡大される旧東京中央郵便局(東京・千代田区=左)、150名余が参加した東京中央郵便局の保存を求める緊急シンポジウム(東京・港区の建築会館=右)
 同局舎は、保存される正面部分に防護ネットが張られているほかは、工事用の囲いが回され、内部では解体工事が進められている。

 同局舎の保存問題は、かんぽの宿問題に続く、鳩山総務相のパフォーマンスで、クローズアップされた形だ。すでに建築学会では、07年から三度、首都の玄関の景観形成としての価値、昭和初期のモダニズム建築の代表作としての建築的価値から保存を訴える要望書を、日本郵政、総務省、文化庁などに提出してきた。

 また、07年6月には、局舎の保存を求める国会議員の会(民主党河村たかし議員など)が結成され、衆院の委員会などで保存を求めて質疑が行われた。08年3月には、市民グループで「東京中央郵便局を重要文化財にする会」が結成され、日本郵政、総務省、文科省、都、千代田区などに陳情してきた。同年6月には、建築学会が、シンポジウムを開き、東京中央郵便局の建築的価値を再確認するなどの論議を深めた。

鳩山パフォーマンスで決着したが…

 しかし、日本郵政は、08年6月に、一部保存した上で38階建ての超高層ビルとする再開発計画を公表、同年10月には、入札で建設業者が大成建設に決まるなど、再開発計画はスケジュール通りに進んでいた。そこに突然の鳩山総務相の登場である。

 重要文化財級の価値がある同局舎の解体は、「トキを焼鳥にするようなもの」と政治家らしい表現で、「解体は国家的損失」として問題をあぶりだすとともに、その剛腕で日本郵政に揺さぶりをかけた。

 文化庁も重要文化財級の価値があるとして評価していたこともあって、日本郵政は3月になって、ばたばたと計画の見直し作業を始め、従来の正面のほか北東部分を保存し、登録有形文化財を目指すことにした。保存部分は2スパン部分、延べ床面積で約1万屬箸覆蝓鳩山総務相も3月12日に見直し案を了承、決着した。保存を唱えてからわずか3週間の収束だった。

 保存問題がこれで終戦のような様相になったのは、鳩山パフォーマンスの功罪でもある。建築学会は、3月11日に見解を発表、東京と大阪中央郵便局の建築的価値は、「外観だけでなく、平面や構造から意匠細部まで含めた建物全体にある」として完全保存を求める姿勢だったが、緊急シンポジウムでは、保存部分の拡大が実現したことで、完全保存を求める熱気が薄れたような雰囲気だった。市民的盛り上がりを背景にしたものではなく、総務相のパフォーマンスによる決着に「肩透かしみたいな決着で、これ以上押せなくなった」と冷めた表情の参加者もいた。

 一方、国会議員の会や市民グループは、重要文化財の指定を求めてきたが、日本郵政は、一部保存したうえで、文化庁に登録有形文化財としての登録を申請するとしている。しかし、登録の明確な基準は明らかでない。建物全体の2割程度の保存で登録されるのかどうか、確証はない。最近では、全体の7割を保存した旧文部省庁舎が登録された例がある。

舞台は、大阪の陣へ

 シンポで、五十嵐啓喜法政大教授が「小泉郵政改革、都市再生特別措置法の施行などの流れを読み取れば、日本郵政が超高層ビルを建て、不動産事業に踏み出すことは、既定の事実だった。郵政の全国の拠点で超高層ビル計画が進められるだろう。市民や建築家はこれにどう立ち向かうかが問われる」と指摘した。

 郵政省建築部OBも登場し、「吉田鉄郎(注)の設計としては、東京中央は様式主義にとらわれている部分がみられるが、大阪中央は、モダニズム建築としての完成度の高い傑作だ。再開発計画が明らかにされているが、大阪の保存はぜひ実現させたい」と強調していた。

 日本郵政は40階建ての超高層ビル計画を立て、年内にも着工の予定だった。東京の推移から当面、延期するとしているが、大阪駅西地区の再開発の要として、平成24年(2012年)竣工を目指している。大阪中央郵便局についても、建築家グループなどから、保存の声があがっており、これから大阪の陣に舞台は移る。名建築の保存と再開発は両立するのか、注目したい。 

(注)吉田鉄郎(1894―1956)富山県生まれ。東京帝大卒。逓信省経理局営繕課に入省、逓信省の建築をリードする設計家だった。当時の先端だったモダニズム建築をいち早く取り入れ、装飾を排し、シンプルで気品のあるデザインを貫いた。柱梁を中心にした日本建築の要素も重視した。東京中央郵便局は1931年竣工。ドイツの建築家、ブルーノ・タウトも日本の新建築の代表として高く評価した。大阪中央郵便局は、1939年竣工。

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- | 2009/03/30 6:02 AM
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